寿光院も支援している「江戸川子どもおんぶず」では、江戸川区が策定中の「ともに生きるまちを目指す条例(素案)」
に対し、以下の通りコメントを提出いたしました。
素案:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/24789/plan.pdf
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2021年4月28日
江戸川区 SDGs推進部 共生社会推進課 共生社会推進係 御中
江戸川子どもおんぶず
代表 大河内秀人
〒132-0025
東京都江戸川区松江1-11-13
松江の家・寿光院
江戸川区「ともに生きるまちを目指す条例」(素案)への意見
平素より江戸川区ご関係各位にはたいへんお世話になっております。
私たち江戸川子どもおんぶずは、国連子どもの権利条約の理念が、子どもに身近な家庭・学校・地域の中で生きる社会をめざす有志により2001年に結成し、以来、子どもの声を聴き、子どもの社会参加を進めるための活動をさまざまな形で行なってまいりました。昨年度は、江戸川区が制定に向けて進めております「子どもの権利条例」の草案づくりに向けて行なわれた、中高生年齢の若者を対象にした「未来を担う若者で考える 子どもの権利ワークショップ」に際しては協力依頼をいただき、子どもたちへの広報や当日のプログラムにて子どもがより自由に自分の思いや意見を発言できるように準備を進めるなどいたしました。
さて、今回発表されました江戸川区「ともに生きるまちを目指す条例(素案)」(以下、共生社会条例素案)を拝見しました。子どもの権利保障や社会参加と切り離せない本条例に、私たちは強く関心を寄せる次第です。
私たちは、誰一人取り残さない共生社会をつくろうとする江戸川区の強い意思に賛同します。共生社会条例のもと、区と区民と事業者が手を取り合って「ともに生きるまち」を目指していきたいと考えます。
そのうえで、子どもを含むあらゆる人たちが何らかの理由によって差別を受けることなく、自由でゆたかな暮らしが守られ、一人ひとりのもっともよいことが考慮されつつ、誰もが自分の意見を表明し、社会に参加できる「共生社会」の実現を願い、私たちからいくつかの意見を述べさせていただきます。どうかご高覧いただき、共生社会条例素案に反映いただきますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、当会がこれまでに提出した意見として、「江戸川区未来を支える江戸川こどもプラン(素案)への意見」(2020年1月)、「江戸川区子どもの権利条例(素案)への意見」(2020年12月)を添付いたします。重複する項目がありますので併せてご高覧いただきたく思います。関連する他条例および他計画とも相互に力を出し合いながら、「共生社会」の領域が保障されることを期待いたします。
■意見1 目指す「共生社会」の姿の表記統一と主体的な「参加」の明記
共生社会条例素案では、前文、第一条、第二条において、目指す「共生社会」の姿が示されています。しかし、内容を見ていくとそれぞれが示すものが少しずつ異なっています。これでは誤解を生みかねませんので、表記の統一が図られることを希望します。
また、区民単体の暮らしのイメージは浮かびますが、人々の交わりやまちの中での動き方などは見えてきません。区民および事業者は、区も含め、ともにまちをつくる主体であり、それぞれの力を発揮し、支える・支えられるといった役割配分を超えた関係の中で実現に向けて手をたずさえてこそ「共生社会」は実現されると考えます。それぞれが「参加」し、「ともに」共生社会をつくることを示すため、該当箇所に「参加」および「ともに」を加えてください。
<意見・提案>
(前文)「一人ひとりが尊重され、誰もが安心して暮らせる社会」、(第一条)「誰もが安心して自分らしく暮らせる社会」、(第二条)「人の多様性を認め合い、支え合い、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会」>>>「一人ひとりが尊重され、自分らしく社会に参加しながら、誰もが安心して暮らせる社会」(前文、第一条、第二条)
(前文)「一人ひとりの「ちがい」が尊重されることが、」>>>「一人ひとりの「ちがい」が尊重され、支え合うことが、」
(第一条)「共生社会を実現することを目的とする」>>>「共生社会をともに実現することを目的とする」
(第四条)「共生社会実現に向け、自ら考え、自ら行動し、及び協働する」>>>「共生社会実現に向け、ともに認め合い、及び協働する」
■意見2 年齢の記載
共生社会条例において、誰一人取り残さないとして掲げる項目に「年齢」が加わることに賛同します。「年齢」によって機会の不均衡が生まれている状況を意識させる効果があり、実現されるノーマライゼーションやインクルージョンがあると考えます。
ただし、具体的な年齢の数値は書く必要はないと思われます。記載された数値に過度な注目を集めることになるのではないかと心配します(例えば、胎児について含まれないと考える人が出るなど)。
<意見・提案>
(前文)「このまちには、0歳から100歳以上の人まで様々な年齢の人たちが暮らしています」>>>「このまちには、様々な年齢の人たちが暮らしています」
■意見3 限定的な差別禁止項目の見直し
共生社会条例が目指す社会像として、「誰もが」または「誰一人取り残さない」という表現を使い、あらゆる人を包摂しようとする姿勢が示されています。「年齢」以外にも具体的な項目が挙げられています。
しかし、現在の素案では限定的であり、意味が通じにくい箇所があります。例えば前文の「外国籍」ですが、国籍が日本国籍であっても日本語を母語にしない人たちや異なる文化を母体に暮らす人たちを含みません。2020年4月より施行されています「江戸川区未来を支える江戸川こどもプラン」においてもその表記は「外国にルーツを持つ」と統一されています。また、第二条一でより具体的な項目が詳述されていますが、共生社会の観点で外すことができない多文化共生の観点が抜けています。「国籍」と「障害や病気の有無」の間に「出身、言語、宗教」が挿入し、より包括的な条文にしていただきたく思います。
<意見・提案>
(前文)「外国籍の人」>>>「外国につながる人」
(第二条一)「年齢、性別、性的指向や性自認、国籍、障害や病気の有無」>>>「年齢、性別、性的指向や性自認、国籍や出身、言語、宗教、障害や病気の有無」
(第二条一)「・・・などの人の多様性を認め合い」>>>「・・・などによって差別を受けることなく」
■意見4 環境共生社会に向けて
共生社会条例の中に「環境とともに生きる」(前文)および「災害等への対応」(第六条)によって環境共生社会を目指すことが明記されたことに賛同します。災害については江戸川区が避けて通れない実態でもあります。
同時に、江戸川区はラムサール条約湿地に登録された葛西海浜公園を有し、桜守や公園ボランティア活動の盛んな点が大きな特徴でもあります。また、2013年に策定された「江戸川区みどりの基本計画」(~2022年)は区民と区のパートナーシップのもと、『水・緑、ともに生きる豊かな暮らし』の実現に向け、現在も動いているところです。
しかし、本共生社会条例案では災害の危険性だけが強調され、日常におけるゆたかな自然や区と区民が取り組んできた活動が包含されていません。どうか、2100年の未来像を彩る環境や景色やその保全に向けた取組みについても記載いただきたく思います。
なお、前文にある「危険性を受け入れ」という言い回しは区民に向けられる言葉としては強すぎるように感じます。「危険性を理解し」または「危険性を受け止め」というのが適切かと思います。
<意見・提案>
(前文)「海抜ゼロメートル地帯である・・・」>>>「ゆたかな水と緑を大切にし、海抜ゼロメートル地帯である・・・」
(前文)「危険性を受け入れ」>>>「危険性を理解し」または「危険性を受け止め」
■意見5 言葉づかい
共生社会条例素案をよくよく読み込んでみるとあいまいな表現や違和感のある言葉づかいが見られました。各条文との整合性が図られ、また条例の主旨に適う言葉に修正していただきたく思います。
<意見・提案>
(前文)「まちづくりの源なのだ」>>>「共生社会の基盤になるのだ」
※まちづくりに取り組むうえでのきっかけやエネルギー源というふうに読める。まちづくりのきっかけやエネルギー源を思い浮かべると、公害や環境汚染、段差や死角だらけの構造、殺風景な景色などがあがります。例えば世田谷区でも、まちづくりが活発になったきっかけは障害者運動(ノーマライゼーション)だと思います。本条文では、「人のちがいが尊重されている状態」を示しているので、「まちづくりの源」とは逆の言葉づかいになるべきだと考えました。
(前文)「一人ひとりの立場や置かれている状況」>>>「一人ひとりの立場や考え、置かれている状況」※立場と状況だけでは不十分。
(前文)「地域に力を与えてくれる」(前文)>>>「地域に力を与える」※パートナーシップにふさわしい言葉づかいにする
(前文)「それらを学びながら先頭に立って走り続けたい」>>>「それらを学び、広い視点からともに高め合っていきたい」※何の先頭に立つのかわかりにくいことと、そもそも大切なの視点は「ともに」ではないか
(第二条三)「区内で働き、若しくは学ぶ者」>>>「区内で働き、学び、若しくは活動する者」※前文と整合性をとる
(第六条)「多様性に十分配慮し行う」>>>「誰一人取り残さない視点に立った取組を行う」※前文と整合性をとる
以上